Code for Tokushima誕生! IODD2015で「ママとICT」のアイディアソン開催
玉有朋子さんによるグラフィックレコーディング
私とオープンデータとの関わりは、2014年2月22日インターナショナルオープンデータデイ2014に合わせて行ったアイディアソン・ハッカソンでした。本年度たからのやま社は、徳島県のビックデータ・オープンデータ利活用として様々なイベントを開催してきました。私もその過程でシビックテックやCode for Japanを知りました。
インターナショナルオープンデータデイ(IODD)とは
オープンデータ政策は世界中の国や都市などの公共機関が取り組んでいます。IODDは公共データ利用を促進する為のイベントを世界同時開催するものです。日本でも国内各地の会場で事前にエントリーした主催者が行政や市民などの協力を得て自主的にアイディアソンやハッカソンを開催します。
シビックテックとは
自治体や市民、企業などが一緒に知恵や技術を出し合って市民の課題解決に取り組む活動のことです。
Code for Japanとは
市民主体で地域課題解決に取り組むコミュニティ作り支援やテクノロジーを活用したアクションを創発する活動を支援する非営利団体。その活動から全国各地に次々とCode for X(全国各地のCode for)が誕生しています。
徳島でも、「Code for Tokushima準備室」が2014年12月11日に立ち上がり、Code for Tokushima第1回目の企画としてIODD2015に合わせたイベントが計画されました。
「Code for Tokushima準備委員会」のメンバー数名はママです。子育て中のママのスキルを有効活用する活動を行っているチルドリン徳島代表理事・野田由香さんの発案で、テーマは「オープンデータアイディアソン『ママとICTで住みよい街を』」とし、メインの参加者は子育て中の母親としました。
もちろん、ターゲット層はアイディアソン未経験者がほとんどです。ハードルを上げずに有意義な時間を過ごさせ、一定の成果を挙げるにはどのように進行すれば良いか。ゴール設定や託児の手配など、普段のエンジニア中心のアイディアソン・ハッカソンとは異なった配慮をしながら計画を立てました。
何に困っとん?
サイレントウォーク
当日は、未来のコミュニティデザイン研究所の佐野淳也さんにファシリテーターをお願いしました。最初に、自己紹介カードを持った参加者たちは「サイレントウォーク」(黙って他の参加者の自己紹介カードを読み歩く)をし、次に出来るだけ初対面の人3名くらいで自己紹介を行いました。その後、ワールドカフェ形式で数名のテーブルに分かれてどのような困りごとがあるのか、課題を出し合う時間を休憩を挟んで2回とります。
ワールドカフェは4〜5人のグループで話し合いをするため、一人の発言機会も増えます。ぬいぐるみを持った人が発言できるというルールは、柔らかい雰囲気とともに、発言者に注目を集める効果的なものでした。テーブルに1名(ホスト)を残し、他のメンバーを入れ替えることで、より多くの意見が集まります。ワールドカフェで出た困りごとを「ハーベスト」(皆んなで共有)します。
出てきた困りごとにはこのようなものがありました。
【主な困りごと】
- 育児休業後、復帰出来るのか?
特に男性ばかりの職場で理解を得られるのか?社会の変化がある中、1年後やって行けるのか? - 頼れる人と繫がりがあるか?
親に協力してもらいやすい妻の実家の近くに住む時、夫に仕事があるのか? - ママのコミュニティに入れるか?
専業主婦と働く主婦はなかなか繋がりにくい - 幼稚園、保育所について
空きがない、情報が少ない - 0歳児を預けるのが難しい
- おむつ替えシートがある場所が分かるアプリがほしい
遊びに行ける場所が決まってしまう - 保活(保育所に預けるための活動)が大変
- 子育てをするために住む場所を渡り歩く
お昼休みは、託児に預けたお子さんと一緒にお弁当タイムです。「かわいい」「じゃんけん、ぽんっ♪」と、楽しい会話があちこちから聞こえ遠足のようです。子どもたちを含めたママたちの交流も深まりました。一方スタッフたちは、出された困りごとを「移動」「小児医療」「働き方」「保活」「ママコミュニティ」に分類し、午後に備えました。
子育てママアイディアソン、スタート!
午後からアイディアソンの始まりです。参加者はそれぞれ自分が考えたいテーマで集まります。テーブルに分かれ、アイディア出しを二段階に分けて行います。「まず、アイディアを考えて皆んなで話し合い」「付箋にどんどん書き出し」などの方法で進めていきました。
【1回目まとめ】
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移動
段差、バリアフリー、時間で一方通行などの情報をシェアー(マッピング)できればよい
イベント情報が分散している。ポータルサイトは色々があるが情報が見にくい
大人がいないと使えないトイレ(トイレの幅)が分かると良い
本での情報はあるけど家に帰らないと分からず、リアルタイムではない
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小児医療
待ち時間が長い
どこへ行けばいいか分からない
流行している病気の情報がほしい -
働き方
【職場側】
業務をクラウド化してもアナログコミュニケーションがあり、会社に行かないと出来ない
周りの理解を得られないことがある
【ママ側】
子どもが出来るとモードが子育てに切り替わり仕事(内容)を忘れるため、会社が定期的に面接するなど接点を持つ
【保育所について】
子どもが病気で仕事を休んで家で診る→保育料が家計を圧迫、保育料を稼ぐのが大変 -
保活
保育所に入るための活動が地域毎に違う
子どもが保育所でもらった病気が母にうつり、結局1ヶ月仕事を休むといった状況で助けになる情報がほしい
幼児医療+仕事+保活をトータル的にサポートするポータルがほしい
母子手帳をもらう時に「産んで6ヶ月で(会社に)戻りたい」「産休をとってから戻りたい」「1回辞めて再就職活動をしたい」など登録をしておいて、妊娠→出産→仕事→子育てをサポートする情報を一カ所で見られるようなものがほしい -
ママコミュニティ
LINEグループは必須
連絡方法が連絡網から一斉送信に変化し、ママ同士のコミュニティが作りづらい
世代間のコミュニティも作り方が違う
幼稚園と保育所でも違う
情報格差があり、ガラケーの人に情報が伝わるのに時差が起きる
田舎は面倒くさい地域のコミュニティがある(良い点、悪い点両方)
徳島市の広報紙は徳島新聞に挟んであるのでその存在すら知らない。生活の最低限の情報は平等に知らせるべき
世代別で必要な情報を整理して出してほしい。
などのアイディアや意見の共有をし、休憩を挟み2回目はそれぞれをより深く掘り下げました。
ママから生まれた子育てアイディア
2回目のアイディア出しの後はチーム発表を行い、参加者のシール投票で賞が決まりました。 「1.チーム名」「2.プロジェクト名」「3.目的」「4.内容」「5.推進組織」「6.必要なオープンデータ・情報」「7.役に立つアプリ等のICTアイディア」の項目で発表しました。
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【最優秀賞】
- ママモニ (保活)
- ママモニプラン
- 女性が自己実現のためのライフプランをたてる!
- 女性がママになる時これからどうしていくかを計画出来るようにする(保育所、スキルアップ…)
- NPOと行政
- 待機児童数(保育所毎)、保育所情報、雇用支援情報(スキルアップ)
- ガラケー、スマホ、PCで検索出来るサイト
- 住む所、出産日、復帰したい日を入れると情報が出て来る。
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【優秀賞】
- 子育て情報発信基地 (ママコミュニティ)
- 子育て情報発信基地project
- 子育て世代の情報格差を埋めるためのコミュニティ作り
- 私たちがほしいのは縦の情報ではなく、横の情報(0歳児、1歳児など)。行政に横の情報を希望するのは難しいので、取りあえず出せる情報をすべてオープンデータで出してもらって情報の一元化をする
- 行政、警察、民間
- 生活情報(行政)、お店のちらし(安売り)、遊び場、不審者情報、イベント
- 一元化された情報をそれぞれにタグ付けして整理する
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【厚生労働賞】
- ママワーク (働き方)
- ママが使いやすいハローワークをつくる
- ママの働き方を探せる(今は探せない)
- テレワークあり or なし、育児休暇の利用割合 復帰率、働いている人の生の声、(会社へ)質問出来るシステム
- 厚生労働省
- はぐくみ支援企業、企業の対応状況
- ハローワークアプリ
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【うごくん賞】
- うごくんじょ〜 (移動)
- とくしま wo 動くんじょマッピング
- 徳島を移動するにあたってバリアフリーの場所や道路情報など自分達で歩いて、便利な地図を作る!!
- オープンストリートマップで様々な情報を「みんなで」入れて地図を作る。
- 徳島県民でプロジェクトに賛同してくれる人
- 私たちがつくる!
- オープンストリートマップ、オープンストリートマップに埋め込む情報をレコーディングするアプリ
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【ママ助かる賞】
- 小児医療 (小児医療)
- 病院をさがせ
- 必要な病院情報が簡単に見つかる
- 自宅近くの病院が地図上に表示される、休診日・診療時間がすぐ分かる、それぞれのHPの予約システムと連携、流行病の情報も提供、#800など色んな医療情報につなげる
- 県医師会との連携、医療機関
- 医療機関の詳細など、待ち時間、問診票記入欄
- ポータルサイト、SNS機能、地図表示
事前のミーティングで「ママのハードルを上げない」「楽しく」というキーワードで進めた結果、参加者のアンケートからも満足度が高いイベントになりました。
【ママから】
「自分がこんなアプリがほしいなと思っていたことが伝えられたから」「とても良い経験、勉強になりました。」「色んな情報がもらえて楽しかった」
【プレママから】
「ママになるといきなり荒波を受けることを知れたこと。ママやパパの大変さのほんの一部を感じることができたこと。」
【パパやエンジニア、行政側から】
「子育て中の女性の悩みやニーズが聞くことができて大変勉強になりました」「子育てをしている方々と話せたこと(リアルな要望が知れたこと)」
国や県が推進しているオープンデータを市民に浸透するには、データをオープンにする側、利用する側(市民)が欲しい情報や困りごと、それを作るエンジニアそれぞれの欲しい情報の共有が必要だということを実感しました。
4月から本格稼働する「Our Open Data」には、オープンデータを利用したアプリを公開する「アプリボックス」と呼ばれる機能も盛り込まれ、本日の成果物として、Code for Tokushimaのエンジニアがこの後作るアプリも投稿される予定です。
本日参加したママたちのような一般市民からの意見や行動によって徳島で公開・活用されるオープンデータが増え、さらに私たちの生活が便利になれば素晴らしいと思いました。
「オープンデータは皆んなの手で。」