「つなげるで〜た・とくしま」第一弾、まずは鯖江と徳島をつなげました!
弊社は徳島県のオープンデータ・ビッグデータ利活用を推進する「つなげるで〜た・とくしま」事業を行っています。「つなげるで〜た・とくしま」は、地域と地域、市民と行政あるいは事業者、色々な人々をデータでつなげたいという思いで名付けられました。その第一弾として2013年5月29日、『オープンデータ利活用の現状とビジネスの可能性 -最先端の町・鯖江からjig.jp代表・福野泰介氏をお招きして-』と題し、オープンデータで今最も注目を集める福井県鯖江市から、その立役者の一人である株式会社jig.jp代表・福野泰介さんの講演会を開催しました。(笹田可枝)
【開催概要】
日時:2014年5月29日 19:00〜21:00
場所:とくぎんトモニプラザ(徳島市)
構成:
1部:講演 jig.jp代表・福野泰介氏「地方にチャンス有り×オープンデータ」
2部:パネルディスカッション 福野氏 vs GTラボ代表・坂東勇気氏
【福野さん講演要旨】
◆なぜ、オープンデータか?
「自分の好きなプログラムを創る為に社長になったが、社長業だけでは技術の最先端にはついていけないので、自ら2012年に『一日一創』と毎日アプリを創り続けた。」
「jig.jpはガラケーでのフルブラウザを販売しているが、スマホが増えてきて対策を考えたのが、W3Cやオープンデータに関わり始めたきっかけ。そんなW3Cの中心、Web発明者のティム・バーナーズ=リーが最近力を入れているのがNEXT Web。新しい時代のWebを創る。行政から新しいWebの世界を作り出そうとしている。」
「行政はデータの宝庫で大量のデータをお金を払ってかき集めている。日本でも市役所や県庁に膨大なデータが埋まっていて、そのデータを新しいWebにインフラとして公開すると面白い。今のWebの世界は非常に不完全でGoogleなしでは成り立たない。もっと便利であるべきはずとティム・バーナーズ=リーは10年以上前から言っていたが、中々転換の機会がなかったので行政と組みはじめた。」
◆そして、鯖江市へ 市長の素早い決断で「データシティ鯖江」を始動
「オープンデータでは日本は遅れをとっていた、そこで2010年W3C日本マネージャーの一色正男慶應義塾大学教授(当時)ともに鯖江市長に「データシティ鯖江」を提案したところ、市長がその場で推進を決断。」
「2012年、データシティ鯖江として市内公園等のトイレ情報が公開され、データを使ってアプリを創ったところ、オープンデータを推進しようとしている学者たちの目に止まった。」
◆なぜ、鯖江が注目を浴びるのか?
「データがあるだけではなくそれを使ったアプリがたくさんあったから。ネタに困った時にはデータシティ鯖江のデータを眺めて考えていた。」(ほとんどが福野さんの一日一創で出来上がったもの)
◆取り組み事例
●鯖江市JK課
「地方から若い人が減っている。特に女性は地方を出ると戻って来ない。若い時に鯖江市に関心を持って関わってもらおうと始めた取り組みで、狙い通りJK課のメンバーは活き活きと活動している。」
●お年寄りがオープンデータを体験
「jig.jpが作った『ナビワンコ』は、かざすとその先に現実と重ね合わせた映像が見えるARのアプリ。それを使って近所の消火栓を透視する事ができるアプリを作り、お年寄りにオープンデータを体感してもらうイベントをやっている。」
●世界初、地方行政としてW3Cに参加
「世界的にも話題になっている。これをオープンデータプラットフォーム(odp)と共に示す事が出来れば(オープンデータが)意識されるようになるのが狙い。」
●「CODE for 〜」
「オープンデータに興味を持ち、活動を始める『CODE for 鯖江』『CODE for 高専』など色々なところで動き始めた。」
◆自治体がオープンデータを進める為に必要なこと
「自由に使っていいというだけでは駄目。今までは、(自治体の)中にデータを持ちながら市民向けに色々なサービスが出来た、全て行政の責任範囲。十分なサービスばかりではなく、足りなかったり、微妙にずれていたりするサービスが多かった。」
「これからは、行政はオープンデータの公開まで。サービスを創るのは民間に開放。オープンデータにしておけば、日本中、世界中で使える民間のアプリができる。これによって健全な競争が行われ、オープンデータを使った新しいビジネスの可能性が生まれる。」
◆このビジネスが大きくなるチャンスについて
「日本中でオープンデータを使ったサービスが行われると、対応範囲が広がる事でビジネスのチャンスが広がる。日本で創ったサービスを世界に展開することができる。逆に世界から入って来る可能性があるので日本も頑張らないといけない。
◆「ビックデータ」と「オープンデータ」
「オープンデータは、データを公開しようとするアクション。結果として色々な都市や企業から出てきたオープンデータを集めたものがビックデータになるので、行政としてまず積極的に取り組むべきはオープンデータ。」
「現在、33都市がオープンデータにしている。その中で福井県が1位。徳島がやることで近県も始めるのではないかという期待が持たれる。」
◆次の課題は?
「オープンデータの次の段階は、市場規模を広げるためRDF化すること。今までのHTML間のリンクに意味がつくのがRDFで、CSV形式などのファイルをアップロードする際に自動変換されるなどの便利なサービスの開発を進めていく。」
「データ形式を統一すると合理的に使う事ができる。SPARQL(スパークル)はRDFクエリ言語。統一的な形式で以前のものよりも簡単になっていて、複雑な知識も必要なくExcelを更新してアップロードするだけ、開発者全体でSPARQLを進めて行くとオープンデータ利活用時に効率が良い。」
【パネルディスカッション】
後半は弊社副社長本田がモデレーターとなり、福野さんと坂東さんによるパネルディスカッション。福野さんと坂東さんは高専卒業で同じ歳、自らアプリ開発をされていて共通点も多く、会場からも何度も笑いが起こるほど楽しい話になりました。
坂東)(株)GTラボは創業して1年の会社。受託開発しないで自社企画のアプリだけで徳島で食べて行くのが理念。統計データを使って出会い系アプリを作ったが、これも見せ方を変えると「子育てしやすい街ランキング」が出来るなど、オープンデータが活用される可能性が見えた。
本田)子育てアプリも作れるのになぜ、作らなかったのか?
坂東)子育てMapやAED Mapを創ってどれ位売れるのか? 普通の人がお金をかけてダウンロードするアプリ(売れる物)と子育てMapやAED Mapは違う。オープンデータはエリアマーケティングの分野だが、GTラボはそこを目指さなかった。
本田)オープンデータを使って作ったアプリで1番うけたもの(ダウンロードされたものなど)は何か?
福野)残念ながら大ヒットしたものはなく、話題性でアクセスが多い。
「トイレ検索」:アクセスが1番多い
「バスモニター」:アクセスが多い
「パズルゲーム」:観光データを使ったもの
オープンソースで出しているので自由に使ってくださいと公表しているが中々使う人はいない。
本田)オープンデータに関するアプリをたくさん創っても会社が儲かる訳ではない。ビジネスの展開の可能性はどこに? Jig.jpさんは、先程発表されたCSVからRDFへのデータ変換支援というB向け事業でオープンデータビジネスを展開していくつもりなのか?
福野)データ変換支援は市(行政)に向けているが、1番大切なのはユーザーが使い続けてくれる事。そしてそれが広告収入にも繋がる。せっかくオープンデータが活用されるようになっているので、そこのお手伝いになるようなサービスにも展開したい。オープンデータ「だけ」を使ってのアプリは難しい、オープンデータ「も」というのがポイント。
本田)オープンデータを使って儲かる可能性があるとしたらどこに?
坂東)儲かるとすればodpはよい仕組み。徳島のオープンデータは今のところビジネスに使える物がなく、もっとGoogleで引っかかるようなコアなデータが出て来ると色々な道が見えてくるのではないか。例えば、政治家の発言が全てオープンで検索できれば、行政の中の動きがひたすらオープンで縁故状態まで見える。マスコミなど調査報道する会社が想定利用機関になる。
本田)テクノロジーが一般市民に近づく為には、アプリケーションだけではなくモノがキーワードになるのではないか?お2人のそれぞれの取り組みについて。
福野)フィジカル熊センサー:くまのぬいぐるみの中にLEGO(マインドストームNXT)を入れ「熊が出たぞ情報でクマが騒ぐ」。熊の出没がわかり、外出を控えることで事故を防ぐ。こういった物を使って面白く伝えていくことで「ネットも悪い物じゃない」と伝わるのではないか。
坂東)すだちくん人形の後頭部にiBeaconを埋めシェアオフィスの入退出のデータを取る実験や、お店に行ったらルーレットが回って大当たりが出たらギフトコードゲットというショップ来店促進(O2O)の実験を行っている。
本田)坂東さんは常に新しい物にチャレンジしているが、なかなか利用されにくいものなのか?
坂東)技術的には面白いが実際にこれをどう使うか(徳島には面白いところがいっぱいあるので)を一緒に考えてくれるコラボ先を募集中。
本田)JK課と福野さんが作ったものの展開について。オープンデータとの関わりは?
福野)JK課のメンバーが自分たちで何ができるか話し合い「アプリを創りたい」ということになった。そして、私たちがアプリ作成のレクチャーをした。どんな不満があるのか?どうなると嬉しいのか?どう実現するか?といった、インパクトマッピングのメソッドをJK課のメンバーに試してもらった。そして今は、実現に向けて動いている段階。
実際に使いたいアプリを作るのが大切。そして自ら広めるところに新しい価値がある。彼女たちが作ったアプリは市民の生活に応用できる。 リアルタイムな情報と各施設のオープンデータ(静的な情報)との組み合わせが面白く、わかりやすく提示することに意味がある。
本田)女子高生がアプリを作りたいと思う背景は?
福野)おじいちゃん向けにアプリを作る講座「コンピュータおじいちゃん」を生んだ街。タブレット・オープンデータを使ってアプリを作るのは実は簡単だよと講座をしたことがメディアに取り上げられ、女子高生にも伝わった。
他にも小学生向けのプログラム教室など、プログラム作りは実は簡単であるという活動を地道にしてきている。アプリ作りは特殊ではなく、誰でも何かできると思ってもらうことが重要。
【笹田の感想】
開催日は平日の夜でしたが、たくさんの方にお越しいただき、データシティ鯖江の現状を楽しく聴講できました。
福野さんも坂東さんも日々止まらず動いている。そんなお2人は本当に創ることが好きなのだと感じました。ただ創るだけではなく、これからの人材育成やITの仕事を生むことで地域が自然と活性される…
オープンデータはデータをオープンにすることがすべてではなく、それをどう活用するか? 活用できる環境や人材が出てきやすい環境を整備するのがとても大切なことだと感じるあっという間の2時間でした。
福野さん、坂東さん、参加された皆さん、本当にありがとうございました。そして、まず2時間一緒にいたメンバーで環境づくりの第一歩が出来るといいですね。
※つなげるでぇ〜た・とくしまは次回も楽しいイベントを企画中です。