北林功さん

投稿日時:2014-12-11 9:00 AM

ポートランドでも手応え – 日本の伝統素材と背景をセットにした世界展開

 京都、北野天満宮や金閣寺にほど近いCOS KYOTOは、日本各地から集めた商品やオリジナルでデザインし直した伝統工芸品を販売し、また日本の伝統産業の素材を展示するショールームである。戦略的に素人目線を挟むことで、先入観にとらわれない製品を生み出しているのが特徴だ。代表取締役の北林功さんにインタビューを行った。(インタビュアー・finder 奥田浩美 取材日:2014年10月)

赤地の色の水玉湯呑が作れた理由

 伝統工芸のリデザイン品として前に出されたのが、佐賀県の嬉野で作られた陶器の湯呑。青地の水玉の湯呑と赤地の水玉の湯呑とがペアのように並んでいる。一見何の変哲もなく見えるが、この水玉、一般的には青が大半だそうである。COS KYOTOでは陶磁器のことを研究した上で、職人さんと相談しながら、あえて難しい赤色を作ることをお願いしたそうだ。

 「『70点人材』と呼んでいるんですけど、職人さんのように一つの分野で頭抜けて100点になるには何十年もの鍛錬が必要。自分は赤点クリアレベルだが、様々な分野を広く知ることでクリエイティブを作っていきたい。」(北林さん)

 元々環境問題に関心があり、ガス会社では省エネ提案などに関わったという北林さん。リーマン・ショックを契機に、地球上でそこにしかないものにこそグローバルに価値があるという考えから、現在に至る活動をスタートさせた。そうした工夫を施した湯呑や急須、箸置等を携え、2013年、アメリカ・オレゴン州のポートランドに始めて向かった。ポートランドは、クリエイティブ人材が世界中から集まることで注目を浴びている。

ポートランドで直面した現実とそこからの挽回

 「いいものだから、好きになってくれる人はいるだろう」と高をくくっていたと北林さんは語る。だが反応は芳しくなかった。アメリカ人のライフスタイルに日本のプロダクトは合わず、例えば急須にしてもティーポットには小さすぎた。そんな失意の中見つけたのが、日本のテキスタイルを使った商品だった。そこにはmaterial by Japan、made in Portlandというタグがついていた。「これだ」と閃いたという。

 「アメリカ人のライフスタイルを常日頃考え続けるのは僕には無理。日頃からそうしたことを考えているクリエーターたちはたくさんいる。彼らの創造力を刺激する日本の素材や技術を持って行ったら、協業できるのでは。僕ができることは、素材とその背景にある文化、使い方などを伝えることだ。」(北林さん)

 不均一な反射をした不思議なシート状のものを見せてくれた。これは西陣の織物に使われている素材だ。和紙の上に漆を塗り金箔や銀箔を貼り付け、熱の反応で色を出してある。通常の工程では、絹糸などと組み合わされ織物に織り込まれていく。。

 「この状態でいいではないかと。先ほどの素人目線で、あえて帯の素材だと見ないことが大事。もう一つは、これをどう使うかを僕の方で決めつけずに、あくまで例として商品を作るが、この先どうするかは世界中の皆さんに委ねる。」

 2014年10月、今度は「素材」を抱えて再びポートランドへ。
「店舗用に10枚欲しいとか、デザイナーが家に飾りたいとか、これでジュエリーアクセサリーを作りたいとか。どうやって出来ているのと聞かれて、これは着物の……とストーリーを話すと、『へー』となる。」

 COS KYOTOは、京都の西陣にある。インタビュー中も隣の工場から西陣織の帯を織る機械の音が響いていた。租庸調の時代から京都には洗練して発信する歴史がある。京都の役割は集積と発信。その役割は大きいと北林さんは語る。将来的には、素材のアーカイブ(データーベース)を作成し、会員制のウェブ上のライブラリのような展開も考えているという。「伝統工芸や伝統産業でなく、文化ビジネス、文化産業と呼んでいるんですけど、新しい分野を作っていければと思っています。」(北林さん)

インタビュー動画
・1本目 https://youtu.be/icRGGAgbyc8
・2本目 https://youtu.be/2oXKup-8NLs
・3本目 https://youtu.be/I7v_yZXiwAw
・4本目 https://youtu.be/3mqD-o6LzKY