投稿日時:2013-09-09 11:00 AM

和歌山のIT企業が挑む「顔が見える生産者」の味 – 表参道・たまな食堂

 和歌山県が推進する「おいしい・健康・わかやま」事業をお手伝いしている杉本綾弓さんから、地元のIT企業が手がけた有名店のエピソードを寄稿してもらいました。(編集担当:本田)

 東京・表参道。駅から徒歩5分程度の大通りを抜けた細い路地の奥に、隠れ家のようにある「たまな食堂」。玄米・有機野菜・発酵食料理が食べられると、自然派で暮らしを大切にする老若男女で賑わっている。

 たまな食堂は、和歌山出身の浦聖治氏が創業したソフトウェア開発企業クオリティグループが運営する。

 フランスの料理学校を卒業し、海外、そして国内の有名レストランで修業を積んだシェフの公文紀一さんもまた、和歌山出身。そのため、使用する食材の7割は和歌山県産である。

 フレンチの本場で学んたシェフが大切にしていることは、意外にも「ふるさとの料理」。
 「子どもの頃、野菜は近所の農家から、魚も顔なじみの行商人から、旬の新鮮なものを買っていました。自然がその土地と季節に合わせて用意してくれたものを、その土地の生産者に素直な気持ちで感謝して食べる。それができる場所でありたいと思います。」と公文シェフは語る。

ソーシャルメディアを駆使した「蟻地獄作成」で注目を喚起

加藤典子さん
加藤典子さん

 社長が体調を壊したことをきっかけに、同社は飲食業に挑戦した。だが、オープンから3ヶ月後、東日本大震災が発生し仕切り直しを決意。マーケティング部門にいた加藤典子さんが加わり、一からコンセプトを練り上げた。

 飲食業界、メディア関係者とのつながりもなく、オープン初日にはお祝いの花は1つも届かなかった。自力で評判を上げ、口コミやメディアの力を借りて広めてもらえるよう、「蟻地獄作成」と銘打ったSNS運用を加藤さんは展開した。

 「第一歩目の口コミを広げてくれるのは、SNSから情報収集をしている、耳の早いマニアックな20~40代の女性です。彼女たちの知りたいこと・欲しいものを研究しました。そして、反応しそうな話題をTwitterでつぶやき、Facebookにも誘導する。”最近、気になるキーワードをたどっていくと、なぜか表参道のたまな食堂という店に行き着くな”と、いう展開を作り出しました。」

気張らずに自然に、地域活性にもつながっていけたら

わかやまポンチ
写真:たまな食堂で提供予定の「わかやまポンチ」 提供:たまな食堂

 和歌山県は、梅やミカンはもちろん、醤油、味噌の発祥の地であり、海からはマグロ、山からはフルーツなど食材は豊富だ。「おいしい・健康・わかやま」を合言葉に、東京・丸の内ではABC Cooking Studioと特別レッスンを行ったり、フランスレストランウィークで食材として使われたりするなど、関東にも進出してきた。

 クオリティグループの開発会社エスアールアイは、和歌山県白浜町に拠点を構え、「地域貢献を通じて世界に貢献する」という志を掲げている。地方に新しい仕事ができて、人が移っていく、その最初のモデルを作りたいのだという。

 「社長が和歌山出身で、和歌山の生産者と顔が見える関係でした。健康を気遣おう!と張り切るのもいいけれど、美味しいものを食べたら、身体にいいものだった。美味しいものが和歌山のものだった。そんな風に、気張らずに自然に、地域活性にもつながっていけたらいいなと思います。」(加藤さん)

 その象徴的なメニューが、学校栄養士や子どもたちが考案し、地元のフルーツを活用したフルーツポンチ「わかやまポンチ」だ。たまな食堂でも、9月6日から1ヶ月限定で食べることが出来る。(取材:2013年8月)