地元メディアが悠々と飛び越えるオンラインとオフラインの垣根
2013年11月29日、京都のロフトワーク烏丸にて「ゼロからの地元メディアづくりに挑戦!運営者と学ぶ今とこれからの価値を産み出すノウハウ」と題されたイベントが開催され、私もモデレーターの一人として参加してきた。(イベント全体を知りたい方は、ロフトワークさんの記事を参照して下さい。http://www.opencu.com/2013/12/local-media/)
登壇したのは、この3つのメディア。
・枚方つーしん(http://www.hira2.jp/)
人口40万の街メディアで月間100万PVに成長、独自の切り口と広告商品でビジネスとしても成功。
・しがトコ:滋賀のええトコ(https://www.facebook.com/shigatoco)
開始1年で滋賀県情報FacebookページではNo1の14000人のいいね!を集め、8月には大津パルコで初のリアルイベントをプロデュース。
・恵那山麓博覧会[えなか](http://www.enaka-gifu.com/)
大分県別府市からはじまった「オンパク」手法を採用したイベント。地域の良さを知る地元の人が、食や歴史文化などを案内する体験プログラムを企画・運営する。
地域に根ざした今どきのメディア運営者の持つバランス感覚
大きく分けて前者2つがオンライン中心なのに対し、えなかはイベント主体で、その情報発信の場としてネットを活用している。地元メディアでは、運営者や執筆者自身が匿名でなくオフラインの場にしっかりと存在することに意味があると私は考えている。finderでは今回の登壇者にとっての、ネット以外の場所についての位置づけ、またその活動を中心にまとめてみた。
枚方つーしん運営者の本田一馬さんは、
「地域サイトでは、誰がやっているというのは絶対に出さなければならないと思っています。枚方に住んでいるコイツがやっていますという方が親近感が上がると思っていたので、進んでサイトに顔出ししています。」
また、地元メディアは不動産広告と特に親和性が高いという。今後は枚方つーしんで物件を取得。店子を集め、PRをセットにして売るという新しいマネタイズの構想も披露してくれた。
しがトコの林正隆さんは、
「名前と顔は、運営者紹介として自分たちの顔をFacebookページのタブに載せています。それが信用に繋がると思っています。逆に取材は、名前を出さずにカフェに行くことも多いです。」
しがトコも大津パルコからコラボの話があった際、Facebookページで広告を載せても意味がないと考え、イベント共催を提案。「大津パルコ滋賀展」と銘打ち、交通安全を促す滋賀発祥の「飛び出し坊や」という看板を全館に展示するという遊び心溢れるイベントを開催した。
一方、イベント主体で動くえなかは、ブログやFacebookページを地域の資源や人のカタログと位置づけ、
「ここを見れば、恵那・中津川の地域の魅力が分かるように”えなか”がなればいいと思っています。」とのこと。
地元メディアこそO2Oの担い手
立ち見も出るほどだった来場者約40名の半数は何らかのメディア運営者であり、地域やメディア、情報発信に対する関心の高さが伺えた。質疑応答では、これまで全く素性を出していなかったので、もう少し出していきたいという声も聞かれた。
地元メディアの課題として常に上げられるのが、継続性とマネタイズである。今回の登壇者が三者三様であったことは、参加者に多くのヒントを与えた。枚方つーしんは、PV数をベンチマークし広告や記事広告でしっかり収益を上げている。しがトコはまさに模索中。えなかは、メディア単体としては積極的なマネタイズは求めず、事業全体で見ている。
インターネット業界では、O2Oという言葉とともにリアルとオンラインの接続が叫ばれている。しかし、今回の登壇者のようなメディア運営者たちは、それらを別け隔てなく初めから一体のものとして考えているようだ。いわゆるネット上に昔から存在する地域の掲示板的なものでなければ、地元メディアというのは、現地の人に話を聞いたり、地元企業から広告をとったりと、リアルの世界との関係で成り立つものだ。そんな当たり前のことに改めて気付かされたイベントであった。