誠照寺

投稿日時:2013-09-19 9:00 AM

全国から「市長候補」の大学生が集まる町・鯖江

大学生の提案に大人がガチで応えるビジネスプランコンテスト

 オープンデータで注目を集める福井県鯖江市には、もう一つの「オープンな取り組み」が続けられている。

 2013年9月9日、同市最大の寺院・誠照寺では、第6回鯖江市地域活性化プランコンテストの決勝プレゼンテーションが行われていた。「市長をやりませんか?」をキャッチフレーズに、全国から選ばれた大学生がチームに分かれ、鯖江の地域活性化プランを競い合う3日間のイベントだ。

 特筆されるのが、運営を地元の大学生が中心に行っていること、そして鯖江市が具体化に向けて検討し、その結果を市のウェブサイトで公表する。若者の提案を大人が真剣に受け止めるオープンさが、今の鯖江にはある。また、市の関与なく実現に至ったアイディアも多い。

 今年は、同市で産出される微発泡水のブランド化プランが最優秀賞を受賞した。商品化には課題があるものの、地元の人が見逃していた鯖江の資産に目をつけた点などが評価された。

 応募資格に「明日の日本を背負うリーダーになりたいと思う全国の大学生、大学院生」とある通り、参加者はエリートといってもよい。今年の優勝チームは来年4月から中央省庁への任官が決まっている。鯖江市にとっては、大学生による新鮮な提案が得られることが大きいが、それ以上の成果は、地元の若者を発奮させられることだ。

大学生
コンテスト終了後の懇親会では、参加者一人ひとりにメッセージ入りの色紙が手渡された。

 他所からやって来た同じ世代の人間に主役を譲り、地元の大学生・高専生たちは、運営側スタッフとして彼らを支える。だが、彼らこそ町づくりや地域活性化の担い手という気概を持つべきであり、この3日間の経験は、大いに刺激を与えたに違いない。大人を対象とした同種のコンテストの構想も出ているという。そこではきっと、スタッフとして関わった地元の学生が自ら主体となるだろう。

 一方、これから国の中枢を動かす若者に地域の現状を理解させ、地域との繋がりを持たせる意味は日本全体にとっても大きい。

 鯖江は「豊か」な町だ。まず、事業者に健全な危機感がある。従来の繊維、漆器、眼鏡の三大産業の衰退を経験し、4つ目の産業としてITの可能性を評価している。次に、地元に愛着を持っている。紆余曲折を経た福井市との合併協議も、鯖江市単独で残ることを決めた。そして、その後誕生した今年72歳になる牧野百男市長の存在。非常に気さくでオープンと関係者は口を揃える。活性化プランコンテストにも審査員として出席し、ブログの更新も欠かさない。この市長の元で、記事で紹介したような風通しの良さが生まれている。