高山(こうやま)小学校で講演する湯川鶴章さん

投稿日時:2012-10-21 5:01 PM

地元の人の情報共有を促したワークショップ – TechWave塾合宿 in きもつき

 肝付(きもつき)町は、鹿児島県の大隅半島の南東側に位置する町。小惑星探査機はやぶさを打ち上げた内之浦宇宙空間観測所があることで少し知られている。

 同町は総務省の予算を得て、光ファイバー網「はやぶさネット」を整備。インフラは整ったものの、有効な活用法を模索していた。IT企業誘致の可能性も検討しているようだが、いきなりは現実的ではない。

 そこで、一歩ずつ機運を高めるために「肝付町情報化推進ウィーク2012」というイベントが2012年9月14日〜17日に開催されることとなった。そこにIT系ブログメディアTechWaveが主催するTechWave塾のメンバーが招待され、東京・大阪から総勢約15名が参加した。私もその企画・運営を手伝わせてもらった。

インターネットのポジティブな側面も誰かが伝える必要がある

 初日の14日は、TechWave塾塾長の湯川鶴章さんが、高山(こうやま)小学校の小学6年生に向けて「ネットが変える社会とこれからの生き方」と題する講演を実施。

 学校教育の中では、インターネットは危険であり、いかに安全に使うかという観点で指導が行われているという。それはそれで重要なことだ。

 一方、ポジティブな側面も誰かが伝える必要がある。湯川さんは、インターネット・ソーシャルメディアの普及によって、たとえそれが少数であり、身の回りにいなくても、同じ趣味趣向を持つ世界中の人と出会える。そのことで、多くの人の働き方、考え方を知ることが出来、自分らしく生きることに自信を持つことが出来る世の中になると力説した。

参考:「熱いぞ、きもつき TechWave塾メンバーと鹿児島肝付町で合宿」- TechWave

 肝付でも多くの人は都会に働きに出て、地元に残る人は、公務員か農家を継ぐか、あるいは、、、という感じだそうだ。全ての人が自分で自分の道を切り拓けるわけではない。子供たちにもっと色々な可能性があること、ロールモデルを大人は見せる必要がある。

 湯川さんの話は小学生には少し難しかったかもしれない。だが、東京から来た偉い(らしい)人が、先生や親とは違ったことを言っていた位のことが記憶に残ってくれれば、まずはそれだけでも嬉しい。

永野町長も参加

皆んなが通った学びの場で地元の人とグループワーク

 TechWave塾合宿3日目になる2012年9月16日には、休校となった川上中学校の木造校舎を会場に、地元の課題をITで解決するワークショップが開催された。

 最初に登壇したのは永野和行・肝付町町長。町の現状と課題についてプレゼンしてもらった。永野町長は今回、毎日どこかのセッションに顔を出して頂いた。トップの本気度が伝わり、我々も身が引き締まる。

 講演に続いて、TechWave塾の塾生と地元の人を交えたグループワーク。TechWave塾の塾生は、大手IT企業で重要なポストに就く人や、独立して起業している経営者などが中心。一方、地元の人は、まるで寄り合いのように歩いて集まってきてくれた近所の人たち。さすがに高齢者が多かったが、20代の若者の姿もあった。

 グループワークは、「一次産品のブランディング」、「観光の活性化」、「田舎でつくるウェブサービス」の3つのテーマに分かれ、それらをITを絡めて、どうより良く出来るかについて討議を行った。

地元の人同士での情報共有が足りない現状も浮き彫りに

一緒に発表

 最後はグループワークの発表。

 「一次産品のブランディング」では、農家のネットの利活用が課題として挙げられた。「観光の活性化」は、写真のようにブレストで出たアイディアを付箋に記し、グルーピングをしていくワークショップのスタイル。点在するスポットを、興味やアクティビティごとに分類することで、より明確なターゲットにコンテクストやストリーを伝えていく方策が示された。「田舎でつくるウェブサービス」では、地元のお年寄りと、医療機関や看護学校などを結ぶ独自のアプリの企画が出された。

 当日は大型の台風が接近しており、開催自体が危ぶまれたが、会場には地元の人も大勢駆けつけてくれた。会場の教室に入れなかった人は廊下にも(こちらの写真参照)。

 グループワークでは、事前の不安を裏切り、地元の参加者も熱心に議論に参加してくれた。自分からなかなか発言しない人も、指名されると思いの丈を話し出す。中学校の校舎という場が、学びの場として非常にいい環境づくりになった。

 一方で、TechWave側からの提案に対し地元の人から「既にやっているんです」という声もチラホラ。さらに、そのことを知らない地元の人が大多数という構図も結構見られ、町内での周知や企画側の準備に課題があることも判明した。

 今回の企画は第一歩。ただの打ち上げ花火で終わっては仕方ない。ここから何を続けていくか。finderとしても肝付町とは今後も連携していきたいと思う。

■肝付についてもっと知りたい人は、最近リリースされたきもつき情報局にアクセスしてみて下さい。