入荷した買い取り本の山に囲まれる、有限会社エコカレッジの尾野寛明さん

投稿日時:2012-11-28 12:00 PM

都内の1/100の賃料という過疎地の利点を活かしたネット古書店

 2012年11月9-11日、島根県江津市にあるNPO法人「てごネットと石見」が主催するツアー「プロジェクト石見☆元気な地域と人に出逢う石見バスツアー」を同行取材してきた。創業支援・人材育成を行う同NPOでは、行政の支援のもと「プロジェクト石見」と呼ばれる地域おこし・産業おこしのためのビジネスプランコンテスト、セミナー、ツアーを主催している。今回のツアーには、東京、神奈川、岡山、島根などの地域から、10名弱の参加者が集まった。

 石見(いわみ)地域は、東西に細長い島根県の西側(左側)に位置する。県庁の松江や出雲大社がある出雲と比べ、端的に言うと田舎だ。「過疎化」という言葉が生まれたのは島根であり、あの鷹の爪団には自虐的に語られもする。石見は、その中でもさらにマイナーな地域だが、その分隠れた魅力や過疎地ならではの先行した施策を見ることが出来る。

 川本町で専門書を中心としたネット古書店を営む、有限会社エコカレッジ

 同社は、2001年に東京都文京区で学生起業。代表の尾野寛明さんが大学院で島根県の中山間地域の研究をするうちに、会社も過疎地における社会実験として移転しようという話になり、2006年10月、閉店になった同町内の書店「紙屋」の跡地に拠点を移した。現在は15万冊を所蔵。川本町のオフィスでは尾野さん含めて4名、雲南市の倉庫では5名(うち4名が障がい者)の雇用を生み出している。

 9割がネット通販だが、脱ネット化も進めている。出雲市の書店では、書店員がセレクトした古本コーナーを設置している。書店業界に詳しい人は分かると思うが、新刊本を扱う書店で古書を並べるのは禁じ手とも言われている。「こういう田舎だから目をつけられない」(尾野さん) 今後は取り扱いを、島根、広島、岡山に少しづつ拡大の予定だ。

 雲南市の倉庫は長期保管用だ。本は発売後一定期間(3年程度)経つと、Amazonで1円本として安価に売られる。それを過ぎる(7−8年後)と価格が上昇に転じる。そのため、長く保管しておく場所が必要となる。ここの賃料は都内の1/100、保管コストは1本当たり月1円だそうだ。ネットと物流を活かし、加えて、土地の余っている田舎だからこそレバレッジの効くビジネスなのである。