古くて新しい「地域メディアの可能性」- 第10回ジオメディアサミット
2012年11月29日、第10回ジオメディアサミットが開催された。ジオメディアサミットとは、位置情報業界を盛り上げるためのフリーカンファレンス。今回はテーマが「地域メディアの可能性」ということで、finderとのコラボイベントとなり、私はパネルディスカッションのモデレーターを務めた。
全体の流れについては、TechWaveの記事を読んでもらうとして、ここではモデレーターをした個人的な感想を書こうと思う。
「人>テクノロジー」を再認識させられた第10回「ジオメディアサミット ~地域メディアの可能性~」【鈴木まなみ】
パネルディスカッションの内容については、話を貰った時から直前まで迷っていた。地域メディアといえば、地域SNSに関して長年活動をしている人もおり、ジオテクノロジーにもっと精通している人もジオメディアサミット界隈には多い中で、私が出来ることは何だろうか? 登壇者は各地域で活動をしている方々だが、私はその共通点をうまく抽象化出来ず、ジオメディアサミットならではの切り口づくりに腐心した。そこでまず当日は、「地域メディア」を「いわゆる報道機関によるニュースだけでなく、人と情報が行き来して何かを繋ぐツールや場全般」と広めに定義して話を進めた。
写真:パネルディスカッション。左から、福野泰介氏、橋本正徳氏、下井勝博氏、杉本礼彦氏、鈴木菜央氏、上仲輝幸氏
テーマ設定の意味については、毎回鋭い分析をされる風観羽さんのブログが的を射ている。
第10回ジオメディアサミット/3層構造で考える地域メディアの未来
主催者の関治之氏もサミット終了後にFacebookで述べているように、いざ成功事例をネットで調べようとしても、なかなか見つからずに困惑することになると思う。正直それが現段階での正味の『現実』だ。だから、今回のテーマ設定に、『今更?』、と感じる向きもあろう。
だが、それでも今のタイミングにこのテーマを選ぶことは大変意義深いと思う。なぜなら、まさにこれから、従来にないほどの非常に大きな規模で『SNSによるコミュニティの活性化』というテーマの大きな波が来る予感があるからだ。だから、今回のサミットはこの大きな波の頂点に乗っかったわけではなかったかもしれないが、絶妙なタイミングでその入り口となったのではないかと思う。しかも、そういう観点で見ていると、一見、比較的地味に見える今回の登壇者のお話の中にも、磨けば光る『原石』を沢山見つけることができる。
パネルディスカッションでは主に、
・どうやって根付かせられる?
・他の地域でも適応できることはあるか?普遍性
・地元のためになっているのか?
を話題にしたが、鍵は「人」といういつも通りの結論に落ち着く。当事者とその巻き込み力、あるいは巻き込まれ力。そしてそこで生まれるコミュニティ。一方、地域でのジオテクノロジーやサービスの活用・連携の事例としては、まだまだ弱かったのも事実。これは今回の人選の問題でなく、風観羽さんも書いているように、以前からあるのに、まだまだ感が拭えないということだろう。
人ありき、その人が抱える地域の課題ありきで、テクノロジーをそこにどう寄り添わせるかが現時点のフェーズ。ここを超えれば、テクノロジーの側からもう少し普遍的な展開が可能になるのかもしれない。
写真:懇親会にて
今回は、今までにないジオメディアサミットだったようだ。参加者も今までとは少し違った顔ぶれだったし、以前からの参加者の評価も賛否両論である。
地図サービスや、地域情報サービスの交流の場としてのジオメディアサミットという軸を堅持して欲しいという意見。
「第10回ジオメディアサミット」終了!(チミンモラスイ!)
あるいは、地域という緩いくくりの中で、サブとしてジオの要素があり、様々なアイディアとエネルギーに満ちていたという意見。
ジオメディアサミットというイベントは進化したかもしれない。(第10回ジオメディア・サミットに行ってきた) (ロカポ ブログ)
ジオメディアサミットのべき論を語る立場には私はいない。しかし、finderあるいは私としては、技術は人のためにあり、地域にある課題解決の現場での活用を促したいし、何よりもそういう人同士を繋げたいと思っている。そして、オンライン上の技術とオフラインの現場の接点に存在するジオ系サービスが、その嚆矢であることは間違いない。
ジオテクノロジーサミットではなくジオメディアサミットと銘打っているからこそ、今回のテーマは可能だったのだろう。これは、主催の関さんがsinsai.info以降抱えていた問題意識であるかもしれない。なので私の感想としては、控えめに言っても、こういう「フュージョン系」がジオメディアサミットあるのはとても面白いと思った。もちろん、例えばiOS6の地図テクノロジーを特集するような技術トレンドにフォーカスした回も同様に楽しみである。