北海道から移住してきた福士憲吾さん

投稿日時:2013-06-25 8:00 AM

「アラタナがあったから宮崎に帰れた」地元1000人の雇用を目指すアラタナ

 宮崎駅前に本社を構える株式会社アラタナは、EC(ネットショップ)の構築から運用支援に特化したベンチャー企業だ。2007年、いわゆるホームページ制作会社として創業。地域にあることの強みを活かせること、また、地元の事業者の応援もしたいと考え、現在のEコマースに特化したビジネスモデルに辿り着いた。

 国内のEC市場は、仕入れ販売型最大手のAmazon、出店モール型として圧倒的規模を誇る楽天が二強だ。また、ZOZOTOWNに代表されるジャンル特化型、最近では、BASESTORES.jpといった新興勢力も注目を集め始めている。その中でアラタナは、月間売上300-1000万円規模の中小企業を主たる顧客に据える。創業者の一人で取締役CTOの穂満一成さんによると、「僕らは独自店舗を(オンラインに)設置するので、本気で売り上げを伸ばしたいお客様に強みが出せていると思います。」とのことだ。

 現在80名ほどの社員数だが、同社では宮崎に1000人の雇用創出を目標にしている。九州を中心に県外出身者が約3割、東京や北海道からの移住組もいる。総合的にECをサポートするため、エンジニア・デザイナーに限らず、カスタマーサポート、営業など豊富な職種を用意出来ることが特徴だ。

「イケてるベンチャーはどこ行っても変わらない」

 前職はカヤックでソーシャルゲームの事業責任者だった土屋有さんは、サポート本部統括本部長として2013年5月に入社。宮崎にUターンし自身の会社を作ったが、アラタナの1000人構想を最短距離で実現させることの方が、地元への貢献度は大きいと判断してのことだ。

 「ビジョンが僕のやりたいこととリンクし、タイミングが重なった。東京でそれっぽく稼ぐよりも、宮崎で泥臭く稼ぐほうがカッコイイ。」

新入社のサポート部統括本部長・土屋有さん
写真:執行役員・サポート部統括本部長としてアラタナに入社したばかりの土屋有さん

 入社直後であり、東京でSEMやマーケティングに従事してきた土屋さんは、豊富な経験から同社の現状を冷静に分析している。
「東京と宮崎の会社では意識の差があるかと思っていたけど、アラタナに関してはスピード感や視点は変わらないですね。リスペクトはもちろん持ってはいましたが、正直向上心にはびっくりしました。」

 一方、メンバーが相対的に自分を見られない点がハードルとも指摘した。東京では類似した段階のベンチャーが競い合い、スキルや視点の程度が比較しやすい。メンバーもキャリアチェンジして入社するため、前職比較が可能だ。東京では相対化させやすい労働市場における自分の位置づけが、ここでは計りにくいことは大きいという。

 また、アラタナは、先輩が後輩・新人を育て、それぞれがお互いに健全な競争関係を持っていると評価する。そのエコシステムをさらに整備するのが土屋さんのミッションでもある。「イケてるベンチャーはどこ行っても変わらないですね。」

 宮崎に本社のある上場企業は、片手で数えられる程度だ。「『雇用があれば宮崎に帰って来られる』、『1000人雇用の目標は希望が持てます』という言葉はよく頂きます。僕らがそういうところの可能性を実現していきたい。社会的にも認められることは、スタッフにとっても、その家族・親御さん、宮崎県にとってもいいことだと思っています。」(穂満さん)

 宮崎に1000人の雇用を生む目標は、決して大風呂敷でもなさそうだ。